放夢新聞 知って得する歯の話 第三回「虫歯のプロセス」
[第975号 平成22年12月13日発行]
虫歯や歯周病が、感染症だということは、前回までの話しでお分かり頂いたと思います。虫歯菌は主に幼少期の2歳から4歳の間にお母さん(保育者)から感染します。
しかし、虫歯菌が感染し歯の表面に住み着いたからと言って、いきなり歯に穴が開く訳ではありません。そうなるまでには必ず通るプロセスがあるのです。
私たちが食事をすると、虫歯菌は口に入ってきた炭水化物を餌にします。虫歯菌は体の中に取り入れ、エネルギーにします。そして、代謝産物として酸を体外に排出します。この酸は非常に強く、歯(エナメル質)が解けるpH5.5よりもさらに低い数字になります。また、虫歯菌はバイオフィルムの一員として歯の表面に存在します。このバイオフィルムによって酸は拡散されずに歯の表面を溶かしていくのです。
これを『脱灰』といいます。
つまり、歯は食事のたびに溶けているのです。また、ここでいう食事とは間食も含まれます。飴玉一個舐めても、缶コーヒーや、スポーツドリンクを一口飲んだだけでも食事になります。
「だったら食事なんかできないじゃないか」とご立腹もごもっとも。
ご安心ください。食事を終えてしばらくすると(一般的に3時間くらい)、溶けた歯は唾液によって、元の健康な歯(エナメル質)に戻ります。
これを『再石灰化』といいます。
唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンが、バイオフィルムの中で過飽和状態になると、再び結晶となって溶けた歯の部分を修復してくれるのです。
規則正しい食生活をしている人は、食事で歯が『脱灰』してもしばらくすると唾液の力で『再石灰化』を起こし、また元の健康な歯に戻ります。しかし、間食の多い人は、再石灰化よりも脱灰の量が多くなり、歯(エナメル質)は再石灰化の機会が無くなり、だんだん溶けていきます。そして、象牙質まで達すると、その進行スピードは劇的に速くなり、残念ながら健康な歯には戻れなくなります。急に虫歯になったように感じるのはこのためです。
虫歯の進行は、虫歯菌の量や唾液量、唾液の質など個人的な要素が大きく影響します。ですから、予防歯科では個人のリスクを検査、診断し、予防プログラムを実践して、虫歯を元の健康な歯に戻す試みを行うのです。
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